更新日:2021/03/03 投稿日:2019/11/30
もしもポリープが見つかってしまったら・・・
胃カメラ検査や大腸カメラ検査などの内視鏡検査は小さな病変を発見することができる優れた検査です。一般的には胃がんや大腸がんを発見するための検査と思われがちですが、内視鏡検査で発見できる病気は多岐に渡ります。胃や腸にできるポリープのその一つ。
ポリープは治療の必要もないものも多い一方、時間が経つとがんになるタイプのものも少なくありません。甘く見てはいけない病気なのです。
そこで今回は、内視鏡検査で胃や大腸にポリープが見つかったときの正しい対応について詳しく解説します。
目次
どうしよう!?胃カメラでポリープが見つかったら
まずは、胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)でポリープが見つかった時の正しい対処法について見てみましょう。
そもそも「ポリープ」とは、粘膜で覆われた臓器の内部にできる隆起性の病変のこと。組織のタイプによってさまざまな種類があり、多くは良性の病気ですが、がんに進行するタイプの病気も少なくありません。当然ながら、ポリープのタイプによって発見された後の対処法は大きく異なります。
胃にできるポリープでよく見られるのは、「過形成ポリープ」、「胃底腺ポリープ」、「胃腺腫」の3種類です。それぞれの対処法をご紹介します。
過形成性ポリープの場合
胃の過形成ポリープはよく見られるタイプのポリープです。色調は赤く、表面がモコモコと歪な形をしているのが特徴です。大きさも様々で、数ミリ程度の小さなものもあれば、2㎝を越える大きさのものも少なくありません。どのような原因で発症するのか明確には分かっていませんが、ピロリ菌感染やそれに伴う萎縮性胃炎が背景にあると考えられています。
過形成ポリープの多くは治療の必要はありません。しかし、稀にがんに進行することもあるため、半年~1年おきに内視鏡検査を行って経過を見ていく必要があります。また、大きさが2㎝以上になるもの、経過を追っていく中でポリープが徐々に大きくなっていくものなどはがん化の可能性を考えて治療を行う場合も。治療法としては、内視鏡の先端から挿入した医療機器を用いてポリープを切除する「内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)」が行われます。
また内視鏡以外にも除菌治療も有効な治療法ですが、がんを否定できない場合や出欠を伴う場合は内視鏡を優先的に考慮するべきです。[1]
過形成ポリープと診断された方は、治療の必要がないと判断された場合でも定期的な検査を欠かさず受け、胃痛や食欲不振などの症状があるときはできるだけ早く病院を受診するようにしましょう。
胃底腺ポリープの場合
胃底腺ポリープも過形成ポリープと同様、胃によくできるポリープの一つです。表面が滑らかで平坦なのが特徴ですが、大きさは2~3㎜程度と小さく、胃の中に多数できるケースもあります。
胃底腺ポリープはがんに進行することはないため、日本消化器内視鏡学会の見解によれば治療の必要はないとされています。[2]
しかし、ポリープの状態を確認するためにも1年に一度程度は内視鏡検査を受けて経過を見ていくようにしましょう。
また、胸やけなどの痛みを和らげる際に用いられる、プロトンポンプ阻害薬を服用することで、胃底腺ポリープの腫大・増加を指摘する研究もあります。[3]
胃腺腫の場合
胃腺腫は最もできやすい胃のポリープです。胃の粘膜の組織が異常増殖することによって発症しますが、表面が滑らかで正常な胃の粘膜とほぼ同じ色調をしています。大きさは2㎝以下であることがほとんどで、急激に大きくなることはまずありません。
がんに進行するリスクは低いため基本的に治療の必要はありませんが、状態を確認するためにも半年~1年に一度は内視鏡検査を受けることが勧められています。また、経過を見ていく中でポリープが大きくなる場合、ポリープの形状や色調が変化する場合などががんのリスクがあるため「内視鏡ポリープ切除術(ポリペク)」を行うことがあります。
大腸がんの可能性も?大腸カメラでポリープが見つかったら
大腸も胃と同じくポリープができやすい臓器です。最新の大腸ポリープ診療ガイドライン[4]によると6mm以上のものは内視鏡的切除が適応されます。ただし5mm以下でも平坦あるいはへこんだ形のものやがんとの鑑別が難しいと判断した場合には切除対象となります。大腸にできるポリープは大きく分けて「腫瘍性」のものと「非腫瘍性」のものがあります。大腸カメラ検査(下部消化管内視鏡検査)でポリープが見つかった場合のそれぞれの正しい対処法を詳しく見てみましょう。
腫瘍性ポリープの場合
大腸にできる腫瘍性のポリープで最もよく見られるのは「大腸腺腫」です。
大腸腺腫は大腸の粘膜が異常増殖することによって生じる病気で、表面が滑らかで赤みを帯びているのが特徴です。大きさは数㎜程の小さなものもあれば、2㎝を越えるような大きなものまで様々。
基本的に症状がありませんが、大腸腺腫は大腸がんになる可能性があるため基本的には大腸がん予防のために治療が行われます。治療は胃のポリープと同じく内視鏡を用いた「内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)」で行うのが一般的です。
非腫瘍性ポリープの場合
大腸にできる非腫瘍性ポリープには「過形成ポリープ、炎症性ポリープ、過誤腫性ポリープ」などが挙げられます。
いずれもがんになるリスクは低いため、症状がない限り治療をすることはありません。しかし、これらのポリープは出血したり、自然に大腸の壁から剥がれ落ちて多量の出血を生じることも多いため、サイズが大きいものや症状があるものは内視鏡による切除を行うことがあります。
また、大きさが小さく、治療の必要がないとされた場合でも1年に一度は大腸カメラ検査を受けて経過を見ていくようにしましょう。もちろん、血便や便通異常、腹痛などの症状がある場合はできるだけ早く病院に行くことが大切です。
みんな知りたい!ポリープ切除にかかる費用は?
気になるポリープの切除にかかる費用ですが、おおよそ1ヶ所 7,000円(1割負担)~20,000円(3割)前後に設定しているクリニックが多いです。※ポリープのサイズや個数によって費用が異なるため、詳細は各クリニックにお問い合わせください。
覚えておきましょう!ポリープ切除のリスク
胃ポリープ、大腸ポリープともに、何らかの症状を引き起こしているものやがんになる危険があるものは「内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)」によって切除する必要があります。
お腹を切る手術と異なり、内視鏡検査と同時に行えるため心身への負担が少ない治療法と言えます。しかし、内視鏡を消化管の中に直接挿入し、なおかつポリープを切除するための医療機器を用いるため少なからずリスクはあります。
具体的には次のようなリスクがありますので、治療を受ける方は検査後の症状に注意しましょう。
- 大腸の壁に穴が開く(頻度:0.2% 発熱、腹痛などを引き起こす)
- 出血が止まりにくい(頻度:0.4% 血便や下血、貧血などを引き起こす)
まとめ
胃や大腸はポリープができやすいため、内視鏡検査を受けて偶然発見されることも珍しくありません。多くは良性のものですので、治療の必要はありません。しかし、中にはがんになるものもあるため、定期的に内視鏡検査を受けてポリープの状態を確認することが勧められています。
また、症状がある場合やがんになるリスクが高いポリープは内視鏡を用いた治療を行う場合もあります。体への負担は少ない治療ですが、出血などのリスクもゼロではありません。処置が遅れると死に至ることもあるため、内視鏡検査や内視鏡治療はこれらのリスクに対処できる医療機関と連携したクリニックを選ぶようにしましょう。
参考文献
[1]一般社団法人 日本ヘリコバクター学会 http://www.jshr.jp/journal/guideline.html
[2]一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 https://www.jges.net/citizen/faq/esophagus-stomach_07
[3]Proton-pump inhibitors: understanding the complications and risks.
Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology volume 14, pages697–710(2017)
https://www.nature.com/articles/nrgastro.2017.117
[4]日本消化器病学会 大腸ポリープ診療ガイドライン https://www.jsge.or.jp/files/uploads/CPGL2_re.pdf