更新日:2021/08/24 投稿日:2020/04/22
内視鏡検査は、胃や大腸の内部を詳しく観察することができる優れた検査です。レントゲンやCTなど「撮影」するだけの検査では分からない小さな病変を見つけることができ、早期がんの発見にも役立っています。
しかし、内視鏡は口や鼻、肛門などから挿入するもの…。当然ながら検査に伴う様々なリスクがあります。その一つが「感染症」です。検査を行うため、内視鏡には細菌・ウイルスといった病原体が多く潜む血液や便などが付着するため、過去には内視鏡を介して感染症が拡がったこともあります。
そこで今回は、内視鏡検査による感染症を防ぐため、現在多くのクリニックで取り組まれている対策について詳しく解説します。
目次
内視鏡検査のリスクと感染症
内視鏡検査によって過去に感染・発症した病気
食中毒を広げる原因となる『サルモネラ菌』

日本での報告はありませんが、海外では内視鏡を介してサルモネラ菌感染が拡がったケースが多数報告されています。
サルモネラ菌は牛・豚・鳥などの腸内、川などに広く生息している細菌の一種です。少量でも感染すると、38℃前後の高熱、下痢、腹痛、嘔吐などを引き起こし、体力のない子どもや高齢者は死に至ることも…。
一方で、サルモネラ菌はヒトの腸の中にも潜んでいることが分かっています。そのため、内視鏡や付属する機器の十分な洗浄や消毒をしないまま別の人に使用すると、付着したサルモネラ菌を感染させてしまうことがあるのです。
知ってた!?『胃カメラ後急性胃炎』
日本人の約半数が感染しているとされるピロリ菌は、胃の粘膜にダメージを与えて胃炎や胃潰瘍を引き起こし、胃がんのリスクを高めることが分かっています。
1990年代には、日本国内でも胃内視鏡検査をした後に胃炎を引き起こす「胃カメラ後急性胃炎」が問題となったことがあります。これは、胃カメラにピロリ菌が付着したまま十分な洗浄・消毒をせずに別の人に使用し、胃カメラを介してピロリ菌をうつしてしまうことが原因と考えられています。
内視鏡の洗浄・消毒方法が広く確立するようになってからは、ピロリ菌の感染率が確実に減少しているとの報告も…。確かな証拠はありませんが、内視鏡がピロリ菌感染を広めていた可能性が高いと考えられています。

現代医療では内視鏡検査で感染する可能性は少なくなっています

内視鏡によるサルモネラ菌やピロリ菌の感染は過去に多数報告されています。通常の医療機器は高温高圧滅菌することで表面に付着した病原体を「滅菌」することができますが、内視鏡は精密機器であるため高温高圧滅菌は不可能…。完全に「無菌」にすることはできません。
というと、内視鏡検査は安全なの?と心配になる方も多いでしょう。ですが、現在では完全に「無菌」にすることはできなくても、病原体のほぼすべてを除くことができるレベルの洗浄・消毒技術が確立しています。
サルモネラ菌であれ、ピロリ菌であれ、感染が生じるにはある程度の菌量が必要。万が一洗浄・消毒で完全な「無菌」にできなかったとしても、感染が生じないレベルに「ほぼ無菌状態」にすることはできるのです。
このため、正しい方法で内視鏡の洗浄・消毒を行うクリニックであれば、内視鏡を介して何らかの感染症にかかるということはまずないと考えられています。
病気の感染予防策とクリニック側の対応について
詳しく解説します!
全ての患者に対して行う標準予防策と特殊な状況で行う感染経路別予防策とは!?
標準予防策(スタンダードプリコーション)って何!?

医療機関には毎日、様々な症状を訴える患者さんが来院します。そのため、患者さんが何らかの感染症にかかっていることを想定し、感染症の拡がりを予防すべく全ての患者さんに対して「標準予防策(スタンダードプリコーション)」が行われるのが一般的です。
特に、内視鏡検査は感染症が拡がるリスクが高い検査のため、現在では徹底した標準予防策を行うことが推奨されています。
感染経路別予防策、その方法と目的とは!?
感染症の主な感染経路は「飛沫感染」・「接触感染」・「空気感染」です。
標準予防策とは、「飛沫感染」・「接触感染」を予防するため、手洗い・手指消毒、マスク・エプロン・手袋の着用、小まめな換気などを行うことです。また、結核や麻しんなど「空気感染」する感染症が想定されるときは、N95と呼ばれる特殊なマスクを使用します。
このような感染対策を徹底することで、医療従事者に感染症がうつるのを予防するだけでなく、医療従事者から別の患者さんに感染症がうつるのを予防することにつながるのです。
患者間の感染を防ぐためには・・・
消毒するための消毒液に浸す!

内視鏡は検査中に病原体が潜んでいる可能性がある体液や便などに触れるため、感染症を防ぐためには使用後に徹底した洗浄・消毒が行われます。
現在、内視鏡に使用されている消毒剤には次のようなものがあります。
グルタール
一般的な細菌、結核をはじめとした抗酸菌、真菌(カビ)、ウイルスなどに効果がある消毒液です。内視鏡の消毒剤として長年にわたって使用されており、内視鏡に使用されている素材にダメージを与えることなく消毒をおこなうことができます。
ただし、消毒に要する時間が長いこと、人の肌などに刺激が強いことがネックとなっています。
フタラール
2001年に厚生労働省から高水準消毒液として承認された比較的新しいタイプの消毒剤です。従来使用されてきたグルタールの難点であった、消毒時間の長さや人体への影響を抑え、消毒時間は5分でOK。肌にも刺激が少ないとされています。
一方で、消毒前に洗浄を徹底しないと微量に付着したたんぱく質が黒く変性してしまうことがあります。
過酢酸
フタラールと同じく、2001年に厚生労働省から高水準消毒液として承認された消毒剤です。強力な酸化力によって細菌やウイルスなどを殺菌します。また、過酢酸は消毒の過程で人体に無害な成分に分解されるため、消毒を行う医療従事者の健康を害するリスクは極めて低いのが特徴です。一方で、適度な酸性度に調節しないと内視鏡に使用される金属を腐食させる可能性があり、現在では内視鏡消毒に適した酸性度に調節された消毒液が各メーカーから販売されています。
処置具に関しては、使い捨てという選択肢も!

内視鏡は先端部分から専用の「処置具」を挿入することができます。それらの処置具を用いて、病変組織の一部を採取して病理検査を行ったり、早期のがんやポリープであれば切除をしたりすることも可能です。
一方で、これらの処置具は血液などが付着する可能性が極めて高く、感染症のリスクが高いもの…。処置具にはとくに徹底した洗浄・消毒が必要となります。
そのため、基本的に処置具には高温高圧滅菌が可能なオートクレーブが使用されます。内視鏡は精密機器のためオートクレーブを使用することはできませんが、処置具はオートクレーブを使用しても問題ない素材が使用されているので高温高圧滅菌ができるのです。
一方で、オートクレーブは理論上病原体を完全に排除できるとされていますが、オートクレーブを使用する際の人的なミスなどによって感染症が拡がったという事故も報告されています。また、狂牛病などを引き起こす病原体である「プリオン」はオートクレーブでは除去できないとのこと。そのため、現在では処置具を使い捨てにすることが最も望ましいと考えられています。
今は安心・安全の内視鏡検査を受けられます!
内視鏡検査は病気の早期発見・早期治療を可能にする優れた検査です。
一方で、体内に挿入する内視鏡は様々な感染症を拡げてしまうリスクもあります。過去には内視鏡を介した感染症も多数報告されたことも…。
しかし、現在では内視鏡の洗浄・消毒の方法が確立されており、内視鏡検査のガイドラインでもそれらの方法を徹底することが定められています。そのため、内視鏡検査で感染症にかかる可能性はほとんどなくなりました。
当サイトでは、ガイドラインを遵守した内視鏡検査・治療を行っているクリニックをご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

おすすめ
クリニック
【内視鏡検査クリニックガイド】がおすすめする主要都市で安心して内視鏡検査が受けられるクリニックをご紹介いたします。それぞれおすすめポイントを掲載していますので、ぜひご参考ください。
東京エリア

えどがわ橋
内科・内視鏡クリニック
おすすめポイント
江戸川橋駅から徒歩3分の好立地なクリニックです。院長の上條信也医師は25年の臨床経験を持ち、日本消化器内視鏡学会専門医でもあります。
内視鏡検査経験数は8万件にものぼるとのことです。検査技術にも定評があり、食道がん、胃がん、大腸がんの早期発見に日々尽力しています。
また、周辺の医療機関との提携を結んでおり、緊急の治療が必要となってもバックアップ体制は整っているのも大きな特徴の一つです。
大阪エリア

大阪
内視鏡クリニック
おすすめポイント
早期発見・早期治療を重視しているクリニックです。通常30分程かかる大腸内視鏡検査ですが、こちらのクリニックでは5~10分で迅速に行われます。万が一検査中に見つかったポリープを切除した場合でも、かかる時間は30分ほど。検査時間が短いので、体の負担も少なく受診することができます。
名古屋エリア

名古屋内科、
内視鏡クリニック
おすすめポイント
検査や治療に伴う苦痛も最小限に抑える事をモットーにしているクリニックです。患者一人一人に合わせて最適な内視鏡を選択してくれる「オーダーメイド」の内視鏡検査が、このクリニック一番の強みと言えます。精密検査などに使われる医療器具は基本的に使い捨ての物を使用し、感染症のリスク軽減にも努めています。