更新日:2020/10/08 投稿日:2020/01/22
あなたは内視鏡検査でこんな不安はありませんか?

胃内視鏡検査や大腸内視鏡検査はがんの早期発見のために欠かせない検査です。2人に1人はがんになるとされる現在。より早くがんを発見し、治療につなげていくことは非常に大切なことと考えられています。また、内視鏡は病気を発見するだけでなく、早期がんやポリープなどの治療を行うこともできるため、現在では検査・治療ともに多くの場面で用いられています。
しかしながら、内視鏡検査というと少なからず不安を感じる方も多いのではないでしょうか?内視鏡検査に対して「痛い」・「苦しい」といったネガティブなイメージを持つ方も多いことと思います。そのため、胃の不調や便の異常などを自覚されていても内視鏡検査を受ける決心がつかないという方も少なくないのが現状です。その結果、せっかく自覚できた早期の不調をやり過ごしてしまい、病気が進行。手遅れになってしまうというケースも…。
現在の内視鏡と同じようなしくみの胃カメラが開発されたのは1960年代。それから半世紀以上の時を経て、内視鏡機器の改良が飛躍的に進められ、内視鏡検査や治療の経験を積んだベテラン医師も増えてきました。そのため、内視鏡検査に伴う苦痛はずいぶん軽減しています。
とはいえ、「痛い」・「苦しい」というイメージはそう簡単に払拭できるものではありません。そこで役に立つのが「鎮静剤」や「麻酔」です。痛みを和らげたり、眠りを誘うことで苦しさから解放してくれるこれらの薬。現在では「鎮静剤」・「麻酔」を用いて内視鏡検査を行う医療機関も増えています。
ここでは、内視鏡検査と「鎮静剤」・「麻酔」について詳しく解説します。
なお、一般的に鎮静剤と麻酔は同じものと考えられがちですが、鎮静剤は眠りを誘う作用を持つもので、麻酔は痛みを麻痺させるものです。全く異なった作用を持つ薬なので、内視鏡で使用する際は注意しましょう。
目次
ちょっと気になる!
鎮静剤や麻酔を使う人の割合ってどのくらいなの?

近年、時間を要する高度な内視鏡治療が普及したこと、なるべく苦痛を取り除いた検査や治療を受けたいという患者が増えてきたことなどに伴い、内視鏡検査や治療の際に麻酔や鎮静剤を使用するケースが増えています。
では、実際にどれくらいの方が麻酔や鎮静剤を用いて内視鏡検査や治療を受けているのでしょうか?2019年に日本消化器内視鏡学会が主催した「内視鏡検査・周術期管理の標準化に向けた研究会」での報告をご紹介します。
とある医療機関のデータによれば、内視鏡検査や内視鏡治療を受けた方の中で鎮静剤を用いたのは2014年には全体の17.7%であったのに対し、2018年には34.7%に上ったとのこと。たった5年間で二倍にも増えていることが分かりました。特に痛みや苦痛が強いと思われがちな大腸内視鏡検査(下部内視鏡検査)では、全体の28.6%が鎮痛剤を使用し、男女それぞれの使用割合は21.6%、38.7%と女性の方が有意に高い割合で鎮痛剤を使用したとのことです。

また、別の医療機関でも鎮痛剤を用いての胃・大腸内視鏡検査を行った中で28.7%は通常の検査であることことが分かり、時間を要する高度な内視鏡治療においてだけでなくても鎮痛剤を使用するケースが多いことが示唆されました。
現在のところ、内視鏡検査・治療の際に用いる鎮痛剤として正式に厚生労働省から承認を受けているものはありません。しかし、2013年には日本消化器内視鏡学会によって「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン」が発行され、現在では多くの医療機関で積極的に導入されつつあるのが現状なのです。
内視鏡検査を受けるときの鎮静剤と麻酔の主な種類
先にも述べた通り、現在のところ内視鏡検査・治療に用いる鎮静剤として保険適応となる薬剤はありませんが、ガイドラインが発行されたことなども影響し、検査中の苦痛を取り除くべく積極的に麻酔や鎮静剤を用いる医療機関が増えています。
実際にどのような薬が使用されているのか見てみましょう。
1.鎮静剤

内視鏡検査・治療で主に用いられる鎮静剤は「催眠鎮静剤」と呼ばれるタイプの薬です。脳に直接作用して身体の動きを抑え、睡眠を誘う効果があります。そのため、検査や治療前に投与すると、意識が薄れて「気づいたら終わっていた」という状態になるのです。
また、これらの薬の中には不安感を和らげるタイプのものもありますので、検査に対する不安が強い方、以前の内視鏡検査や治療でつらい思いをしたことがトラウマとなっている方、痛みに弱い方などに向いていると考えられます。
2.表面麻酔
表面麻酔とはいわゆる「局所麻酔(部分麻酔)」の一種で、痛みのある部分や痛みが生じる恐れのある部分の粘膜に直接塗ったり吹きかけたりする麻酔のことです。皮膚に塗ったり吹きかけたりしてもほとんど効かないとされていますが、粘膜に使うことで痛みを感じる末梢神経の働きをブロックする効果が得られます。
内視鏡検査・治療では主にのどや鼻、肛門など内視鏡を挿入する際の刺激で痛みが生じる部分に使用されます。また、のどの感覚も麻痺させる作用もあるので、多くの方が苦手とする内視鏡挿入時のオエっとした嘔吐感を軽減する効果もあるとのこと。
表面麻酔は鎮痛剤の使用が普及するよりだいぶ前から使用されており、内視鏡検査・治療ではほぼ必須であると考えてよいでしょう。
内視鏡検査で鎮静剤や麻酔を使用するメリット、デメリットは?
「薬で眠っている間に終わっていた」…。そんな感想を聞けば、抵抗があった内視鏡検査を受けてみてもいいと思う方も多いことでしょう。確かに、鎮痛剤や麻酔を用いた内視鏡検査は苦痛を大幅に軽減することができるため、検査への不安や抵抗、恐怖などを解決する一つの手段となります。しかしながら、麻酔や鎮静剤は強い作用をもつ「薬」です。思わぬ副作用が引き起こされる可能性もゼロではありません。
では、内視鏡治療での鎮静剤の使用にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
内視鏡検査で鎮静剤や麻酔を使用するメリット
内視鏡検査での鎮静剤や麻酔の使用には次のようなメリットがあります。
苦痛が少なく検査が受けられる
内視鏡検査には苦痛がつきものです。胃内視鏡検査ではのどや鼻から内視鏡を挿入する際に痛みが生じ、ファイバースコープがのどを通るときはオエっとした嘔吐感が引き起こされます。一方、大腸内視鏡検査では内視鏡を大腸の奥へ進めていく中で腸が伸ばされる痛みやお腹の張りなどを感じやすく、特に腸が長い方や手術歴があって腸と周辺組織が癒着している方などは非常に強い痛みを感じるとされています。
麻酔や鎮静剤を用いるとこれらの苦痛を最小限に抑えて検査を行うことができるため、受検者の精神的・身体的負担は大きく軽減できます。
より詳しく検査を行うことができる
通常であれば、胃内視鏡検査は10~15分、大腸内視鏡検査は30分前後の時間を要します。この間、受検者は苦痛を感じることとなり、あまりの苦痛のために暴れる方も少なくありません。すると、検査をする医師も早く終わらせようと急いで検査を行い、結果として十分に胃や大腸の中を観察し切れていない…というケースもあります。
せっかく検査を行ったからには、隅々まで胃や大腸の中を観察して小さな病気も発見したいもの。鎮静剤を用いると医師が焦らず落ち着いて検査に集中することができますので、より詳しい検査が可能になるのです。
内視鏡検査で鎮静剤や麻酔を使用するデメリット
内視鏡検査で麻酔や鎮痛剤を使用するには次のようなデメリットがあります。
副作用が出ることがある
現在、内視鏡検査の際によく用いられるタイプの鎮痛剤は副作用が現れやすい薬です。具体的には、血圧低下、呼吸の異常、徐脈(脈がおそくなる)といった副作用が現れやすく、気づかぬまま検査を行っていると低酸素血症など恐ろしい合併症を引き起こすことがあります。
また、表面麻酔で使用される薬の成分は多くの方が安全に使用することができますが、中にはアレルギー症状を引き起こす方も…。蕁麻疹やかゆみなど軽度な症状のみのことが多いですが、呼吸困難や血圧低下など「アナフィラキシー」を引き起こすケースもあるので注意が必要です。
検査の所要時間がかかる
麻酔や鎮静剤の効果は検査が終了したと同時に切れるわけではありません。また、目が覚めたとしても薬の成分が身体に残っている状態ではフラフラしたり立ちくらみが起きたりするためすぐに帰宅することは困難です。
このため、麻酔や鎮痛剤を用いた検査では検査終了後に一定時間安静にし、安全に起き上がったりすることができると確認しなければなりません。鎮痛剤を用いない検査よりも所要時間は一時間ほど長くなるのもデメリットの一つと言えます。
検査中の記憶が無いことがある
麻酔や鎮静剤を用いて検査を行うと、その間受検者は意識なく眠った状態となります。検査中の記憶はほとんどありません。そのため、自身の胃や大腸の状態がどうであるのかリアルタイムで知ることができず、さらにはどのような内視鏡治療を行ったかもわからないので、かえって不安が増したとの感想が聞かれることもあります。
車の運転や機械の操作、重要な仕事などは検査後不能
鎮静剤を用いた場合、検査後に一定時間安静にして帰宅した後も眠気や集中力・注意力の低下などが続くことがありますので、検査後は車の運転、機械の操作など危険を伴ったり、重大な事故につながる危険のある行為はできなくなります。
検査後に仕事がある方、自家用車でなければ通院できない方などは鎮静剤を使った検査は勧められませんので注意が必要となります。
なぜ日本の全ての医師が麻酔を使わないのか?
気になるその歴史的理由とは?

内視鏡検査の際に麻酔や鎮痛剤を使用する医療機関が増えてきたとはいえ、欧米などの先進国に比べるとまだまだ使用する率が低い日本。
鎮痛剤の使用にはデメリットがあるものの、苦痛を最小限に抑えた内視鏡検査ができるというのはデメリットを越える大きなメリットであるとも考えられます。それにも関わらず、日本ではまだ鎮痛剤を使用しない医療機関も多いのでしょうか?
そこには内視鏡診療にまつわる歴史が大きく関係しています。胃内視鏡は日本で開発され、内視鏡を用いた胃がんの集団検診も世界に先駆けて行われてきました。しかし、かつての胃内視鏡は現在のものに比べて非常に太く、とても受検者が口から受け入れられるものではありませんでした。そのため、積極的に麻酔を行ってより多くの方が抵抗なく検診を受けられるようにしていたのです。その結果、確かに胃がんの早期発見数は増えましたが、麻酔による事故も多く起こり、中には死亡事故もあったと言います。
このような背景から、内視鏡診療は「より苦痛の少ない検査が可能な細い内視鏡の開発」と「医師の技術向上」に目が行くようになり、麻酔を使用することは邪道であるとの考えが広まっていったのです。
また、マイケルジャクソンが鎮痛剤を過剰に使用したことによる中毒死やサムスン統帥長女が麻酔薬中毒であることなど、鎮静剤や麻酔薬のイメージを低下させるようなニュースも多いため、日本人全般が鎮静剤や麻酔に何らかの抵抗を持っていることも一因と考えられます。
しかしながら、日本消化器内視鏡学会が内視鏡治療における鎮静剤使用のガイドラインを発行するなど、日本でも鎮静剤などの使用が徐々に浸透してきているのが現状です。
まとめ
現在では、内視鏡検査・治療による苦痛を最小限に抑えるため、鎮静剤を用いる医療機関が増えてきました。しかし、鎮静剤には今回ご紹介したようなデメリットもあり、必ずしも安全に使用できるわけではありません。また、使用を希望したとしても歴史的な背景から鎮静剤の使用を勧めない医師も多くいます。
内視鏡検査で鎮静剤の使用を希望する場合は、患者としてある程度の知識を備えておくことも重要です。その上で、医師と相談して決めていくようにしましょう。
また、鎮静剤を使用する場合は、できるだけ使用実績が多く、副作用が現れたときの対応もバッチリしてくれる医療機関が安心です。

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